派遣先企業でパワハラを受けて悩んではいませんか?
どの職場に行っても、「何だかこの人とは合わないな」と感じる人はいるもの。
悪くするとパワハラやセクハラの常習犯が居座っている可能性もあります。
特に派遣社員は正社員の人よりパワハラを受けやすい環境にあります。
どうしても「立場が下」「所詮は外部の人間」と思われてしまいますから・・・
ハラスメントを受けていないまでも、派遣で働いているなら他の人とは違う扱いを肌で感じることが多々あるかと思います。
派遣業界でもパワハラやセクハラは見逃せない大きな問題。
対策に取り組む派遣会社が増えているとはいえ、改善まで持って行くのはなかなか難しいものがあるようです。
運悪くパワハラのある職場にあたってしまい、被害を受けているのはこちらなのにも関わらず、パワハラで困っていることを申し入れると契約打ち切りになってしまうという理不尽。
今回は派遣先でパワハラを受けた場合にどこに相談すればよいか、どうしたら対処法を取ればよいのかについて紹介します。
目次
派遣社員はパワハラを受けやすい
パワハラとは「職場での優位性を利用し、自分より立場が下の者に肉体的・精神的苦痛を与える行為」のことをいいます。
派遣先企業に配属され、そこの指揮命令者の指示のもとで仕事をする派遣社員は、どうしても下の立場に見られがちです。
非正規社員であるという理由から派遣社員を見下す人もいます。
「働くなら正社員じゃないと」「何で正社員にならなかったの?」とやたら聞いてくるタイプの人間ですね。
家庭の事情や本人の都合で、自分で考えて派遣社員という選択を決めた人もいると思うのですが・・・
派遣先企業は、派遣会社から見ればお金をいただくお客様。
職場での上司に不平や不満があっても、ダイレクトに伝えることなんてできません。
また、派遣社員は派遣先企業に直雇用されている正社員とは違うため、コミュニティーの輪に入れずに孤立してしまいがちです。
正社員と派遣社員で、仕事の情報量が違う、食堂やトイレなど派遣社員が使えないスペースがあるなんて話もよく耳にします。
私が前に派遣で仕事をしていた職場の支店長は、「派遣は~」「派遣さんは~」と事あるごとに区別するような話し方をしていました。
おそらく本人に自覚はないと思います。
企業理念では多様性を認め~とか何とか立派なことが書いてありましたが、現場で働いている人の意識なんてその程度なのでしょう。
そういう無意識のうちに職場の人間を「内」と「外」で分けてしまう感覚が、いつしか派遣社員を下に見る傲慢な態度につながりパワハラにつながることがあるのです。
派遣社員へのパワハラとしては肉体的・精神的苦痛を与える行為の他、契約の打ち切るような言動、正社員より重い責任の業務を割り振る、派遣社員であることや人格を否定する言動といった様々な事例があります。
それって本当にパワハラですか?
「自分は派遣社員だから、正社員にあれこれ言われてしまうのは仕方ない・・・」
そんなふうに諦めてはいませんか?
派遣社員も他の労働者と同様に、働きやすい仕事環境を求める権利があります。
派遣先企業がお金を払ってくれるお客様であろうとも、黙って我慢せずに相談しましょう。
派遣社員の場合、まずは自分が登録している派遣会社の営業担当者やコーディネーターに相談しましょう。
ですが相談する前に一つ確認してほしいことがあります。
あなたが受けている行為、それって本当にパワハラですか?
こちらの記事 でも紹介しましたが、セクハラの判断基準が受けている人が「不快であるかどうか」なのに対し、パワハラの判断基準は「不当であるかどうか」となっています。
【 関連記事 】これってパワハラ?意外に知られていないパワハラの定義
●派遣先の上司から激しい口調で怒鳴られた
●他の人よりも業務量が多い、難しい仕事をさせられた
怒られるのは誰だって嫌ですし、割り振られた仕事量に差があるのは納得がいかないでしょう。
でもそれは「不当」とまで言えることでしょうか?
パワハラと認められる判断基準の「不当」とは、悪質性をきわめれば(悪質でないパワハラは存在しないと思いますが)傷害罪や暴行罪、名誉毀損罪など刑事事件に該当するほどのもの。
つまりは厳しい叱責も事前に聞いていたのと違う仕事内容も、
「それってパワハラじゃなくて、コミュニケーションの問題じゃないですか? 法律的に問題になるほどのことではないと思いますが」
パワハラに該当することがきちんと説明できないと、派遣会社も対応してくれないのです。
パワハラを派遣会社に訴えても助けてもらえない?
派遣先企業で辛い思いをし、パワハラを受けたと派遣会社の担当営業者に連絡しても、必ずしも派遣会社があなたを助けてくれるとは限りません。
派遣社員から「派遣先でパワハラを受けた」という相談は珍しくありません。
そんな相談を受けた派遣会社は何を考えるかというと、「どうにかして波風を立てずに事態を収束する方法はないか」を考えます。
派遣会社にとって派遣先企業はお金を払ってくださるお客様。
営業担当者はあなたと派遣先企業の間に立っているように見えても、あなたの完全な味方になることはありえません。
もし派遣社員の味方となって派遣先企業に苦情を入れたなら、その派遣会社は契約を打ち切られる可能性が高いでしょう。
派遣会社は他にもたくさんあります。
口うるさく苦情を入れる派遣会社なんて、別に使う必要なんてないのです。
派遣会社は派遣先企業と長く付き合いたいため、苦情があってもあまり強くは言いきれないのです。
派遣先企業も、派遣社員の味方になることはありません。
なぜなら派遣社員なんて所詮は社外の人間だから。
たとえ、明らかなパワハラ社員がいたところで自社の社員をクビになんてできません。
それなら派遣社員であるあなたを別の人員に変更する方が断然手っ取り早いのです。
派遣先でパワハラされた時はまず証拠集め!
職場でパワハラされたと思った場合は、まずはあなたがされたことが本当にパワハラなのかを確認しましょう。
そうでないと「ただの苦情・クレーム」と思われてまともに対応してくれないばかりか、最悪の場合だと契約を切られて仕事を失う危険性すらあります。
パワハラはセクハラと違って法令的な基準がありませんので、実際のところ判断するのは難しいです。
パワハラについては厚生労働省が出している定義があります。
前に紹介したこちらの記事と照らし合わせて、確認していただけたらと思います。
【 関連記事 】これってパワハラ?意外に知られていないパワハラの定義
本当にパワハラを受けているのであれば、あなたが受けたパワハラの記録や証拠を集めましょう。
●誰に、いつ、どこで、どんな発言や行動をされたのか
●なぜそうなったか、周りに目撃者や同席者はいなかったか
●その時のあなたの気持ちや心身の状態はどうだったか
これらをできるだけ事細かに記録しておきましょう。
メモ書きでも立派な証拠になります。
中傷のメールやLINEでのやり取りなどがあればそれらも保存しておきます。
可能ならば音声も録音しておくとよいでしょう。
証拠を集めるのは結構難しいです。
ですが証拠を提出すれば、相談を持ちかけた時に動いてもらうことができます。
証拠を集めてから、派遣会社の営業担当社に相談をしてみてください。
派遣会社の人はクレーマーの対応はしたくありませんが、真っ当な主張にはしっかり対応してくれるはずです。
ましてやパワハラは、悪くすると刑事事件にも発展しかねない行為。
パワハラの証拠がついた訴えを、派遣会社は見逃すわけにはいかないのです。
派遣会社が対応してくれない場合は訴訟の検討も
まずは派遣会社の営業担当者か相談窓口に相談する
パワハラを受けていると感じたらまずは派遣会社に相談してください。
間違っても、先に派遣先企業に相談や連絡をしてはいけません。
派遣会社に相談する前に派遣先企業へ連絡してしまうと、場合によっては話がこじれ、さらなるパワハラを受けてしまう可能性があります。
派遣会社の営業担当者、もしその営業担当者が頼りにならない場合は、派遣会社の相談窓口
に相談しましょう。
この相談窓口の連絡先は、派遣会社のホームページに載っていることが多いです。
派遣会社は、あなたと派遣先企業との間に入る仲介役です。
派遣先企業へ職場改善の交渉や忠告をしてくれるかもしれませんし、あるいは派遣先を変えるなどの手続きをしてくれるかもしれません。
派遣先企業の相談窓口担当者へ苦情申し立て
派遣会社が頼りにならない場合は、派遣先企業の担当者へ苦情申し立てをすることができます。
派遣先企業の担当者とは、派遣先企業で働くときに交わした契約書に「苦情申し立て担当者」という形で記載されているかと思います。
大体は人事部の人の名前が書かれているようですね。
この担当者は、派遣社員が職場で抱える労働環境に対する相談を聞いてくれる人になります。
もちろんパワハラを受けている時もこの人に相談しましょう。
派遣社員が自社の社員からパワハラを受けて困っている、そんな事実が発覚すれば派遣先企業も何かしらのアクションを起こさざるを得ません。
それでもダメなら労働局や弁護士に相談を
パワハラを受けていることの証拠がきちんとある場合、基本的に派遣会社は対応してくれます。
ですが証拠があるにも関わらずちゃんと対応をしてくれない、職場環境の改善が見られない場合は、労働局に相談に行きましょう。
ここでもパワハラの証拠や記録が役に立ちます。
労働局に相談でしてもらえることとは、
●労働局の担当官に助言をもらえる
●あっせん委員を交えた話し合い
になります。
あっせん委員とは、社労士や弁護士といった第三者の専門家からなる人たちのこと。
そして派遣先と派遣会社に労働局から通知書が届き、労働局に行って話し合いをすることになります。
労働局からの通知書が届いたら、さすがに派遣会社も派遣先も注意して対応せざるを得ません。
それでもなお職場環境の改善がなされない場合、あるいは損害賠償や慰謝料を求めたいという場合でしたら、弁護士へ相談し裁判をするということになります。
「訴訟を提起します」、これは労働局への相談以上に威力があります。
ただし裁判を起こすのであれば、訴訟に向けてきちんとした準備が必要です。
裁判に向けた資料を作成しなければなりませんし、弁護士への支払いなど、裁判にかかる費用もかかってしまいます。
費用と労力、時間が多大にかかることなので、ここまでの準備や覚悟ができない場合は、労働局への相談くらいに留めておくのがよいのではないかと思います。
いっそ派遣会社を変えてしまうのも手
パワハラの証拠を集め、派遣会社と派遣先企業に相談したが何も改善されない・・・
それならば何とか頑張って次の更新日まで仕事をし、新しい派遣先を紹介してもらいましょう。
その場合はまず派遣会社に連絡し、次の契約は更新しないことを伝える必要があります。
派遣社員のような働き方の場合、自らの意思で次の契約を更新するかどうかを選ぶことができます。
期間満了まで仕事を全うするのが派遣社員の契約です。
契約期間が残っていても「やむを得ない事情」があれば期間を短縮することもできます。
あまりにもパワハラがひどくて、心身に何らかの不調が出てしまっているのならば、病院で診断書をもらいましょう。
体調不良も「やむを得ない事情」の一つです。
派遣会社に診断書を提出すれば契約期間の短縮などに応じてくれるかもしれません。
そしてこれは最終手段ではありますが――
契約期間内であっても、派遣会社自体を辞めるという選択肢もあることを覚えていてください。
最もやってはいけないのは、派遣会社との関係悪化を気にしてパワハラされている今の状態を我慢してしまうことです。
「契約期間が終わるまでは辞められない」「契約期間内に辞めるともう仕事を紹介してもらえない」というのは事実です。
そう思って辛い中、じっと我慢して働いている派遣社員の方もいます。
ですが今の状態が続いて辛い思いをしているのであれば、無理してまで働く必要はないと思うのです。
パワハラは被害者の心と体を脅かします。
いじめや嫌がらせを我慢して働き続け、うつ病になったり精神的に病んでしまっては元も子もありません。
潰れてしまってからでは遅いのです。
派遣先も派遣会社もあなたを守ってくれません。
あなたの心と体はあなた自身で守るしかないのです。
パワハラを解決するのはとても難しく、正直な話、退職や転職してしまう方が簡単です。
派遣社員のメリットは仕事を変えやすいこと。
派遣会社自体を辞めるという選択肢もあることを忘れないでいてほしいと思います。
この記事のまとめ
●パワハラされたと感じた時、それが本当にパワハラかどうかを確認する
●パワハラは証拠がなければ相談しても動いてくれない
●パワハラの相談は派遣会社、派遣先企業、労働局の順に行う
●パワハラが改善されないなら派遣会社を変えてしまうのも一つの手
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。