前回記事 の続きの続きになります。
私が「絶対に買わないと決めている会社」、
それは大学卒業後に私が入社した会社です。
その企業は今でいうところのブラック企業でした。
前回の記事で、
企業説明会や選考では全く説明されていない部署に配属になった
全国に展開している企業だったが運よく自宅から通える支店に配属された
特に希望する部署もなかったので、与えられた仕事に尽力しようと思っていた
しかし配属先の支店にはタイムカードはなく、スケジュール管理もされず、日によっては睡眠時間もろくに確保できなかった
という配属と勤務時間について書かせていただきました。
今回は引き続き、支店での業務内容について語らせていただきます。
前回記事 → 私が絶対に買わないと決めている会社の株(前篇)
目次
配属になった部署の業務内容と構造について
企業名の公表は避けますが、私が入社した会社は、
掃除用品レンタルの最大手、そしてフード事業としてドーナツ店の全国展開をしている会社です。
ちょっとややこしいのですが、配属になった部署でどんな仕事をしていたのか、
業務内容と構造について説明させてください。
入社後の1ヶ月研修を終え、私は清掃サービスの事業に配属になりました。
具体的な業務としては、一般家庭や飲食店、事業所などを訪問して掃除を行います。
その内容は、お風呂や台所やトイレの掃除、エアコンクリーニング、床洗浄後のワックスがけ等、多岐にわたります。
ドーナツ店がフランチャイズ契約で全国展開していることからわかる通り、
この会社はフランチャイズというシステムをいち早く導入し、加盟店を増やすことでを大きくなった会社です。
だから同じ社名を掲げた店舗でも、本社の直営店とフランチャイズ契約を結んだ加盟店との2種類の店舗が存在します。
私は本社で採用となったので直営店に配属になったのですが、ややこしいことに、直営店の店舗の中にも加盟店の人がいます。
フランチャイズ契約を結んだ個人事業主で、「店舗を持たない加盟店」とでもいいましょうか。
つまり本社の直営店ではありますが、同じ店舗建物の中に、
本社で採用になった本社スタッフ (← 私はこの中の一人)
フランチャイズ契約を結んだ個人事業主 (以下「加盟店」)
パート・アルバイト
という、働き方の形態の異なる従業員が混在しているのです。
(実際にはもっと細かい区分がありますが、混乱を招くのでこれ以上の詳述は避けます)
人数で見ると、本社スタッフが最も少なく、次いでパート・アルバイト、そして加盟店の人数が最も多くなります。
私の配属部署で言うと、
本社スタッフ 3人(上司、先輩、私)
加盟店 7人
パート 8人くらい
という状況で、掃除の技術も売上も人数も、全て加盟店が本社スタッフを上回っている状態でした。
私は年齢的にもキャリア的にも、支店の中の本当に一番下っ端のポジションに加えられることになったのです。
水汲みと汚水運びの毎日
加盟店の人たちは、短くても10年以上のキャリアがある人たちです。
パートの人たちも若い人でも30代前半、私より10歳以上の年上の人たちでした。
本社での研修は、会社の事業説明や社会人としてのマナーを教わったのみ。
清掃業務の研修は配属後2ヶ月経ってから行われるため、仕事については本当に右も左もわからない状態でした。
本社スタッフなのだから、本来は加盟店・パートに指示を出さなければならない立場だったとしても、さすがに年齢もキャリアも下っ端の立場なのはわかっています。
前回記事で書いたとおり、最初に大きな現場が入っていたこともあって、水汲みと汚水運びといったサポートに徹しました。
周りの邪魔にならないよう、自分のできることをやる――。
水汲みと汚水運びばかりの日々が続きました。
それ以外の作業といえば、雑巾を絞って水拭きしたり、ガラスを拭いたりするくらい。
しかし時間が経つとともに、私は「焦り」を感じるようになりました。
清掃は誰でもできる仕事、と言われがちです。
確かに、特殊な資格などは不要ですが、道具の使い方や作業手順、段取りなどは覚えなくてはなりません。
誰でもできる仕事だからと言って、知識が全く要らないわけではないのです。
1ヶ月くらい経つと、違う支店に行った同期の人たちと、私との間で技術の差が広がってきました。
中には、一人で現場に向かい、エアコンクリーニングや床のワックスがけができるようになった人もいます。
一方の私は1ヶ月の間、ただ水を運んだだけ。
このままではいけない・・・!
焦りを感じた私は上司に嘆願しました。
「水を運ぶだけでは何の技術も身につきません。
同期には、もう一人で現場をこなしている人もいます。
お願いです、他の仕事もやらせてください」
しかし私の嘆願はあっけなく却下されました。
「Sさん(売上トップを出していた加盟店の人)を見てみろ。
あの人は技術もあるが、水汲みなどのサポートも周りを見て上手にこなしている。
水を運ぶだけの仕事というが、どんな仕事でも学べることはあるはずだ。
一人で現場に行きたいと言っているが、
お前は本社スタッフでありながら、加盟店から仕事を取り上げるつもりか!?」
そんな風に言われたら引き下がるしかありません。
しかし・・・
支店配属から1ヶ月が経とうとした頃、信じられないことが起こりました。
事業責任者をしていた先輩の転勤が決まったのです。
それは私が次の事業責任者となることを意味していました。
支店配属1ヶ月で事業責任者に
1ヶ月間水汲みしかしていなかった人間に、ベテランたちに指示を出し現場の指揮をとれ、というわけです。
繰り返しますが、この段階ではまだ清掃業務の研修は受けていません。
全体の指揮を取るどころか、作業の段取りも清掃の資機材の使い方も知りません。
そんな人間に指揮なんかとれるはずがありません。
君は一番若いし、できることからやっていったらいい――
とはなりませんでした。
配慮も同情も容赦もなく、悪い意味で一人前として扱われました。
ただ「事業責任者だろ」という言葉で現場を任されました。
自分より経験も技術もある加盟店やパートの人たちに、指揮なんてとてもできません。
だからといって任せ切りにしていると
「ちゃんと指示しろよ!」
と怒られるわけです。
だからといって何か指示をしようとすると、
「何で一番仕事できないヤツに指図されないといけないんだ!」
と怒られるのです。
こんな調子でうまく仕事ができるはずがありません。
失敗すれば周りから怒られます。
そして上司はというと、私を庇うどころか一緒になって怒るばかり。
この時になって、上司に清掃業務の技術がほとんどなかったことに気付きました。
上司は、会社に入って16年目でしたが、1年前に別の部署から移って来たばかり。
清掃業務の経験なんてほとんどなかったのです。
それでも1年はキャリアがあるはずですし、清掃業務の研修は受けているはずなのですが・・・
事業責任者である先輩に仕事を全面的に任せていたため、1年経っても、全く技術を磨かずにいたのです。
今思えば、「仕事を教えてほしい」という私の嘆願を突っぱねたのも、清掃技術がないために教えることができなかったからではないでしょうか。
しかも性質が悪いことに、上司はとてもプライドが高い人間でした。
技術のあるベテランの加盟店の人に「教えてほしい」と頭を下げるでもなく、
私を「育ててくれ」と預けるでもありません。
失敗続きで怒られるばかりの私は、みるみる元気を失っていきました。
支店では常に泣きそうな顔をしていたと後で聞かされました。
「退職」という文字が、一日に何度も頭を横切ります。
そして支店配属2ヵ月後、清掃業務の研修に参加しました。
同期と過ごした研修で「もう一度頑張ってみよう」と思った
支店配属2ヵ月後の清掃業務の研修にて、再び同期の人たちと顔を合わせました。
悪い噂ほどよく伝わるもの。
技術もろくにないのに事業責任者になって辛い日々を送っている話をその場の全員が知っていました。
腫れ物に触るような扱いではありましたが、同期の皆は私を励まし、「研修、一緒に頑張ろう」と言ってくれたのです。
研修期間は2週間。
会社が定める清掃サービスを、座学と実務でひたすら期間内に叩き込むという感じです。
朝から夕方まで掃除について学び、夜は同期の人と、仕事や今後の展望について語り合いました。
覚えることの多い研修は大変でしたが、
同期と過ごせたこの時間だけは、会社で勤めていた中で最高に、そして最後に楽しく思えた時間でした。
初めこそ、日頃の実務経験の差から遅れを取った私でしたが、最終確認の筆記試験では満点をとることができました。
この研修は今まで数百人くらい受講しているそうですが、最終試験で満点をとった人はあまりいないそうです。
決して自慢を言いたいわけではありません。
本当に、もう一度頑張ってみようと真剣に思ったのです。
しかし、そんな決意はあっという間に砕け散ってしまいました。
研修に行っても、試験で満点をとっても、
状況は何一つ変わらなかったのです。
自分に向けられる怒声と罵倒 とうとう幻聴が聞こえるように
帰ってきた私が真っ先に知らされたのは、研修で抜けた間に上司が起こしたクレームについてでした。
たった2週間のうちにクレームを5件起こしたというのです。
しかもそのうちの1件はシャレにならないくらい大きなものでした。
上司はお客様に出入り禁止を誓約させられ、
支店長と他店に配属した先輩が対応して謝罪を繰り返し、
ようやくお客さんも怒りを鎮めてくださったことを聞かされました。
上司は掃除だけでなく、仕事そのものもできなかったようです。
しかも汚点を他人に晒したくはなかったのでしょう。
なぜお客様をそこまで怒らせることになったのか、上司の口から直接説明を聞くことはありませんでした。
「悪いな、頼むわ」といつも通りの不機嫌そうな顔で短く言われただけ。
クレームの経緯について詳述しませんが、どういうことを仕出かしたのか、他の人から話を聞いて、自分なりにつなぎ合わせ、ようやく理解することができました。
とにかく、研修後すぐの仕事は「上司の失敗の尻拭い」だったのです。
研修を終えたといっても、それで仕事の質がいきなり上がるわけでもなく、私の扱いは変わりませんでした。
何よりも、加盟店はいわば「職人化」して自分流のやり方を持っており、本社の言うことなんて聞きやしません。
それどころか「本社の研修なんて何の役にも立たない」と切って捨てるばかり。
その「自分流」も、作業手順を相違工夫するならとにかく、異なる薬剤や洗剤を混ぜると言ったような非常に危険な方法を平気で行います。
有害なガスが発生したりしたらどうするつもりなのでしょうか?
正直言って頭がおかしいとしか言いようがありません。
本社スタッフが大きなクレームを出し、そして加盟店に言いたいことも言えない。
私たちがそんな有様ですから、パートの態度も段々と大きくなります。
終いには「オレがいないと支店は回らない」なんて調子づく始末です。
男性の多い職場でしたが、裏側は嫉妬や陰口だらけでした。
加盟店の間でも売上や成績に差があります。
売上の高い加盟店には「金の亡者」と裏で罵り、
売上の少ない加盟店には「怠け者」や「仕事じゃなくて小遣い稼ぎ」と陰口が叩かれる。
派閥ができていたり、その派閥の中でも不仲があったりして、裏側は非常にドロドロした職場でした。
加盟店同士でそれですから、仕事ができないのに給料をもらっている私への風当たりは、日を増すごとにキツイものになりました。
終いにはパートにも顎で使われるように。
嫌われることを恐れた私は、一回り以上も年上の人たちにジュースをおごったりして機嫌を取ったりしていました・・・
思い返してみても、本当に惨めで無様でした。
何かをしてもしなくても怒られるなら、動かないほうがマシじゃないか。
怒号と罵声に心が麻痺し、睡眠不足で思考力が落ちた私はすっかり萎縮してしまい、指示されたことすら満足にできなくなっていました。
そしてこの頃から、眠ろうと電気を消すと耳元で怒号と罵声が聞こえるようになります。
フラッシュバック、幻聴というのでしょうか。
昼間に浴びせられた怒声が夜になると、混線したラジオのように聞こえてくるのです。
それでも退職せずにいたのは、「早期退職は甘え」という考えがあったからでしょう。
研修で同期の人と語り合った、目標とか展望とかはとっくの昔に消え失せていました。
そして・・・研修から帰ってから間もなく、家族に「あること」が起こりました。
この「あること」がきっかけで、私は退職を決意することになります。
今回で終わらせるつもりだったのですが、予想以上に長くなってしまいました。
退職を決意するきっかけについては次の記事で語らせていただきます。
そして次で最終になるよう、まとめて行きたいと思います。
次回までお付き合いいただけると幸いです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。